上の写真はショップに預かり修理のご依頼があった、2レバータイプのコールマン508ストーブ。
とろ火ができるコールマンの2レバーストーブは、生産が終了してから一段と人気が高まった感があります。
生産が終了したコールマン製品を使い続けるには、ユーザー自身でのメンテナンスと消耗部品の調達がネックです。
今回の修理のご依頼内容は、2レバーのキモともいえる黒レバー部の再生。
久しぶりに使おうと思ったら、根元からポッキリ折れてしまったとか・・・。
コールマンに修理に出したら、ジェネレーターアセンブリーごと交換が必要で、部品在庫がないため修理不可で返送されてきたそうです。
メーカーが修理不可ではあきらめるしかないのかとネットサーフィンしていて、このブログにたどり着き修理をご依頼いただくことになりました。
ピークワン400系ストーブの黒レバー部のグラファイトパッキン交換や、黒レバーの代替品作成などはコールマン社が推奨する修理方法ではありません。
しかし、2レバーストーブ用ジェネレーターの在庫が枯渇しつつある現在、自力で何とかするしかないと考えるユーザーも多いはずです。
2レバーストーブの黒レバーリプレースメント品作成は、ショップによくご依頼いただく作業のひとつです。
現物合わせの地道な作業になりますが、オリジナル部品と遜色ない黒レバーを作ることは可能です。
ジェネレーター本体を破損させてしまうリスク等ありますが、自力で黒レバーのリプレースメント品を作ってみようというのであれば読み進めてみてください。
黒レバーの破損しやすい箇所
上の写真は508ストーブの黒レバー部、六角ナットをはずしたところです。
動作品であれば黒レバーは挿入されたままで、抜き取るにはそれなりに手間がかかります。
このストーブの六角ナットをはずすと、下の写真のように黒レバーが折れていました。
コールマン2レバーストーブの黒レバーは、高温にさらされるうえ可動部品なので摩耗や金属疲労が進みやすい部品です。
管理人の経験上、黒レバーが折れる箇所はほぼ決まっていて、バラしてみると下の写真のように大体がスペーサーの根元部分からポッキリ折れていることが多いです。
黒レバーのリプレースメント品作成
上の写真は破損した黒レバー先端とスペーサーをジェネレーター内部から取り出した状態です。
黒レバー取り付け部の六角ナットを緩めただけでは、上の写真のように破損した黒レバー先端とスペーサーは取り出せないことがほとんどです。
この先はトーチバーナー等を使用する作業になりますので、耐熱手袋を使用するなどしてやけど等に気を付ける必要があります。
破損した部品を取り出す
2レバーストーブの黒レバーが折れた状態のジェネレーターは、上の写真のように古いグラファイトパッキンとスペーサーが内部に残っています。
破損した部品を取り出したあと、パーツクリーナー等でジェネレーター菅の内部洗浄を行っておくとベターです。
まずは下の写真のように、千枚通しなどを使って古いグラファイトパッキンを掻き出して除去します。
古いグラファイトパッキンを除去するだけで、ポロっと破損した黒レバー先端とスペーサーが出てくることもありますが、たいていはスペーサーとジェネレーターが固着していて簡単には取り出せないと思います。
固着したスペーサーは、挿入部分をジェネレーターの外側から熱してやることで、挿入部分の内径が膨張して取り出すことができます。
この作業には耐熱煉瓦等トーチバーナーが使える環境を整える必要があります。
トーチバーナーでジェネレーターを炙る
オールドコールマンのメンテナンス作業でトーチバーナーを使う場合、とても重要なことがあります。
ロウ付けされている部分を必要以上に加熱しないことです。
トーチバーナーの熱でロウが溶けてしまうと、部品がバラバラになります。
真鍮でできているジェネレーターも、下の写真のようにいくつかの部品がロウ付けで接合されています。
上の写真のようにジェネレーターの根元など、はんだ付けのような銀色のボンドのようなものがついている箇所があるはずですが、それがロウ付けです。
ジェネレーター内部に残ったスペーサーを取り出すためにトーチバーナーで炙る際も、スペーサーが挿入されている部分のみを炙るようにします。
スペーサーと折れたレバーを取り出す
スペーサーが挿入されている部分を十分に炙ったら、上の写真のように木の板などの上でトントンと軽く叩きます。
この時、あまり強い力で叩くとジェネレーター菅が根元から曲がってしまいますので、加減を調整しながら作業します。
グラファイトパッキンを綺麗に除去してあれば、ほどほどの加熱で下の写真のようにポロっとスペーサーと折れたレバーが出てくるはずです。
ジェネレーターから取り出した破損レバーは、その形状をコピーしてリプレースメント品を作成するので、捨てずに取っておきます。
破損レバーの先端形状をコピーする
上の写真は破損して折れた黒レバーの部品一式。
スペーサーと六角ナット、黒ノブはリプレース品に流用します。
新しいレバー作成に必要なのは、そこそこの強度のある金属ロッド。
ピアノ線、鉄線、ステンレス線あたりが素材の候補になります。
今回は工具箱の中に転がっていた、下の写真にある長さ15cmほどのステンレス線を使用しました。
上が破損したレバー、下が今回リプレース品に使用するステンレス線です。
純正レバーの太さは2.3mm強、長さ約10cmほど。
使用するロッドの太さや長さは厳密に同じである必要はありません。
外観にこだわるのであれば、太さ2.3mm、長さ10cmのステンレス線加工をおすすめします。
上の写真は折れた黒レバーの先端部の形状を原寸合わせでコピーしているところです。
火力調整の精度を決める重要な個所なので、できる限りオリジナルの形状に近づくよう、何度も重ねながら微調整していきます。
湾曲部の加工にはラジオペンチ等、先の細い工具を2本使っても可能ですが、下の写真のようにワイヤー曲げツールを使うと楽です。
クリーニングニードルを取り付ける
上の写真は2レバージェネレーターの火力調整のキモともいえる、クリーニングニードルを挿入するところ。
クリーニングニードルに入っているスリットには向きがあり、正しい向きで挿入しないと火力調整がおかしなことになります。
下の写真が正しい向きで挿入したクリーニングニードルを、レバー挿入部から見たところです。
ニードル先端をカバーするGas Tipは、レバーとの連動動作確認後に取り付けます。
レバーの取り付け
破損したレバー先端部をコピーしたロッドを、オリジナルのレバーに可能な限り近づけて作成していきます。
スペーサーを挿入してから、クリーニングニードルのスリットと噛み合うようにジェネレーターに差し込みます。
スペーサーは下の写真のように、細いマイナスドライバーなどできっちりと奥まで挿入します。
グラファイトパッキンの形成
黒レバー基部にグラファイトパッキンを詰め込んでいきます。
今回使用したグラファイト素材は厚さ0.4mm、幅約6mmの粘着テープ付きリボンです。
グラファイト素材はシート状のもの、テープ状のものなどありますが、厚さが薄いものが作業しやすいかと思います。
使いやすいグラファイト素材が見つからない場合には、ショップで使用しているものを小売りしますのでご相談いただければと思います。
グラファイト素材はできるだけ隙間なく、可能な限り厚くレバーに巻き付けていきます。
下の写真のように、ジェネレーター挿入部にキツキツで入っていくぐらいが理想です。
黒レバー基部の六角ナットが締めこめるよう、ネジ部が見える程度までグラファイト素材をマイナスドライバーなどで下の写真のように押し込みます。
グラファイト素材を六角ナットが締めこめる程度にまでジェネレーター挿入部に押し込んだら、下の写真のように六角ナットを締めこんでパッキンを形成します。
グラファイトパッキンは可能な限り厚く形成しておいた方が、次のメンテナンスまでの期間が長くなります。
六角ナットをきつく締めこんでも、下の写真のようにネジ山が見えている状態であれば、純正品の倍ほどのグラファイトパッキンが形成されています。
締めこんだ六角ナットを緩めてみて、およそ下の写真のような位置までグラファイトパッキンが形成されていれば上出来です。
クリーニングニードルの動作確認
グラファイトパッキンの形成が終わったら、動作の最終確認です。
レバーをおよそ180度操作した時に、クリーニングニードルがちゃんと機能するかを確認します。
レバーの整形は最後に行いますので、下の写真のようにクリーニングニードル動作確認のための仮整形を行います。
レバーの先端をL字に曲げるだけの簡易整形で十分です。
レバーの動作は、ジェネレーターをストーブに装着した状態で、正面左が「CLEAN」、右が「LIGHT/HI」です。
なので、下の写真のように「CLEAN」の位置でニードルが出っ張り、「LIGHT/HI」の位置でニードルが引っ込むかを確認します。
Gas Tipを取り付ける
クリーニングニードルの動作を確認したらジェネレーターのガス吐出部にGas Tipを取り付けます。
取り付ける前にGas Tipの内側と穴をパーツクリーナー等で洗浄しておきましょう。
Gas Tip取り付け時にニードルを曲げてしまうことのないよう、慎重な作業が必要です。
黒レバーの整形
黒レバーの整形は中古か新品のジェネレーターがあれば、現物合わせで重ねながら曲がり部分などの形状をコピーします。
ほかにジェネレーターを持っていなければ、破損したレバーに重ねて曲がり部分などの形状をコピーすればOKです。
この作業にも先ほどご紹介したワイヤー曲げツールが活躍します。
下の写真は純正レバーの曲がり具合をコピーして作成したもので、破損した黒レバーからツマミを移植すれば完成です。
黒レバーリプレースメント品の動作確認
上の写真はコールマン2レバーストーブ用純正ジェネレーター400-5891との比較写真。
上が純正ジェネレーター、下が黒レバーのリプレースメント品を装着したジェネレーターです。
外観は純正品と遜色ない仕上がりになってるんじゃないかと思います。
動作確認用の動画もご覧いただければと思います。
黒レバーリプレースメント品の作成について
黒レバー先端部の加工など、やや難度が高い作業もありますが、まずはご自身でトライしてみてほしいと思います。
グラファイトパッキンの交換作業については、2レバージェネレーター再生マニュアルにまとめてありますので、あわせてご活用いただければと思います。
黒レバーリプレースメント品の作成はショップでもお請けしていますので、どうしてもうまくいかない時はご相談いただければと思います。