上の写真はオーストリア製ホエーブスNo.29アルコールストーブ。
1900年代に作られた重力加圧式の2バーナー仕様です。
ホエーブスストーブは625や725がよく知られていますが、アルコールストーブにも多くのモデルが存在します。
火力では灯油やガソリンを燃料とするストーブに軍配が上がりますが、プレヒートの短さや燃焼音の静かさではアルコールストーブが勝ります。
煤や臭いが出ないのもアルコールストーブの大きなメリットになるかと思います。
ホエーブスのアルコールストーブは国内ではなかなか出てきませんが、eBayなどにたまに出品されています。
ただ、入手しても資料や情報が少なく、レストアには根気が必要でしょう。
管理人の場合、これまで入手したアルコールストーブがそのまま使用できた経験はありません。
部品が欠品していたり、部品が錆びて朽ちていたりしている個体がほとんどです。
およそ100年前に作られたものなので、そりゃそうですよね。
ホエーブスのアルコールストーブにはベポライザー(Vaporiser)という、コールマン等のジェネレーターに該当する部品があります。
No.29は2バーナーのため、ベポライザーも下の写真のように2本になります。
このベポライザーの内部に挿入されている気化部品に鉄製のワイヤーが使われているため、錆びて朽ちた気化部品を取り出すのに難儀することが多いです。
今回入手した個体の気化部品も取り出すことはできたものの、下の写真のように1本は錆びて朽ちており、もう1本も朽ちる寸前といった状態でした。
ベポライザーの作成
ベポライザーの役割は燃料のアルコールをバーナーの炎で熱し、気化した状態でバーナー部へ送ることです。
コールマンランタンやストーブに使われるジェネレーターと同じ原理になります。
ベポライザーの内部に挿入する気化部品の素材や形状は、機能するのであればなんでもいいと思われます。
今回はアマゾンで送料込み100円ほどで入手できるアルミパイプに、メンテナンスで余ったセラミックファイバーを詰めて作成してみます。
ホエーブスNo.29は2バーナーなので、ベポライザーも2本。
作成する気化部品も下の写真のように2本になります。
外径7mmのアルミ管を19cm弱にカットして、最終的に原寸合わせで長さを調整しようと思います。
カットしたアルミ管には外径に4本の線をけがき、2cm間隔で2mmの穴を穴を開けていきます。
下の写真が穴を開け終わったアルミ管。
アルミ管の内部には毛細管現象が起きる部材を挿入する必要があります。
これまで100番のステンレスメッシュ、径0.5mmの真鍮線での作成歴がありますが、今回は下の写真にあるセラミックファイバーを使用してみます。
セラミックファイバーはコールマン400シリーズなど、ピークワン系ストーブのバーナーボックス内に使われていて、ジェネレーターが温まるまで一時的に余剰燃料を溜める役目をしています。
セラミックファイバーが劣化していたり朽ちていたりすると、点火時に盛大な炎が上がることになります。
ピークワン系ストーブの点火時に大きな炎が上がるときは、バーナーボックス内のセラミックファイバーをチェックして、真っ黒になっていたら交換してみてください。
点火時の燃焼安定までの時間が劇的に変わります。
セラミックファイバーをベポライザー内部に挿入すれば、おそらくいい感じに機能してくれそうな気がします。
セラミックファイバーは手で簡単にちぎれるので、下の写真のように少しずつアルミ管に詰め込んでいきます。
細い割りばしなどを使うと、アルミ管の奥まで簡単に詰め込むことができます。
アルミ管エンド部はセラミックファイバーが燃料で簡単に流れないよう、下の写真のように念入りに固めておくといいかと思います。
反対側のエンド部には今後のメンテナンスで引き抜きやすいよう、オリジナルと同じようにワイヤーをくくりつけておきました。
下の写真のようにメンテナンス時にはラジオペンチなどで簡単に引き抜けます。
気化部の素材はセラミックファイバーでも問題なさそうですが、ややちらつきが気になり最終的にはカーボンフェルトに素材を変えたところ、下の写真と動画のように満足のいく燃焼具合になりました。
ホエーブスNo.29の燃焼動画と詳細画像
ホエーブスは625、725あたりがよく知られていますが、アルコールストーブにも多くの名機があります。
ガソリンや灯油ストーブにはない趣がありますので、このブログをきっかけにご興味を持っていただけたら嬉しいです。