ずいぶん前に動作未確認品としてeBayで落札した、ホエーブスNo.9ストーブ。
調べても使い方や仕様の情報が乏しく、そもそも燃料に何を使えばいいのかも分からない状態でした。
管理人の場合、初めて手にしたガソリンストーブが725だったのですが、いつの間にか使えるかどうかもわからないモデルにも手を出すようになってしまいました。
入手時には使うことができなかったホエーブスNo.9ストーブ。
必要な工具を買ったり作ったりしながら、見事再生することができました。
ホエーブスNo.9ストーブはオークションでもめったに出てこないレアものですが、再生までの道のりを記録しておきます。
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ホエーブスNo.9ストーブの仕様
ネットでいくら調べてもホエーブスNo.9ストーブに関する情報は乏しく、かつてヤフオク等に出品されていた画像ぐらいがヒットするのみです。
修理に関してはClassic Camp Stovesで似たようなストーブの修理方法を参考にしました。
ストーブの形状と構造から、ホエーブスNo.9はGravity Stoveと言われるアルコールストーブであることがわかりました。
つまり、燃料タンクに入っているアルコールの重さでバーナー部へ自然給油するしくみです。
燃料バルブを開けるとバーナー部へアルコールが出てきて、必要に応じてアルコールの吐出量を調整することで火力をコントロールできます。
点火できず分解する
ホエーブスに使うプレヒート用のアルコールがあったので、試しに点火してみることにしました。
燃料バルブを開けるとちゃんとアルコールが出てきましたので、そのまま使えるかと思ったのですが・・・。
バーナー部が温まったころにアルコールが出てこなくなってしまいました。
本来なら気化したアルコールがバーナー部へ吐出され、安定燃焼するはずです。
燃料菅、ベポライザー(気化装置)あたりが詰まりを起こしているのではないかと思い、分解清掃することにします。
固着したベポライザーを引き抜く
燃料タンクからバーナー部への給油菅内部には、上の写真のように何かが突っ込まれています。
調べてみると「Vaporiser」というフィルターと気化装置を兼ねた物っぽいということがわかりました。
ただ、この部品が曲者で、ラジオペンチで引っ張り出そうにもうんともすんともいいません。
パーツクリーナーに漬けこんでも、バーナーで炙ってもびくともしない固着具合です。
ラスペネを1日おきにたっぷりと吹き、様子を見てみることにしました。
ラスペネを吹き始めて3日目、夜中に作業していたのですが、突然ズボっと引き抜けました。
下の写真のようにVaporiserが引き抜けたのはいいのですが、ラスペネに混じった煤やタール、黒い汚れが部屋中に飛び散り、掃除が大変なことになりました。
そして給油菅やVaporiserをパーツクリーナーに漬けてみると、中から劣化したタールまみれのウィックが出るわ出るわ・・・。
これじゃスムーズにアルコールがバーナー部に出てこないのも頷けます。
そして残念なことに引き抜いたVaporiserを見てみると、真鍮部品ではありますが、下の写真のように途中でちぎれていました。
つまり、給油菅の内部にちぎれたVaporiserの一部が残ったままということになります。
細い給油菅の中に残った、ちぎれたVaporiserの一部をどのように取り出すか、3日ほど寝ても覚めてもそのことばかり考えることになりました。
フックツールを自作する
ちぎれたVaporiserと給油菅の長さから、残っている部品を取り出すには長さ25cmほどのフックツール、もしくはピックアップツールと呼ばれるものが使えそうです。
色々と検索してみたのですが、細い管の中にある金属部品を引っ掛けて掻き出すという用途に適した工具はなかなか見つかりませんでした。
それならば作るしかない!ということで、長さ29cmの千枚通しの先端を曲げて、下の写真のようにフックツールに加工することにしました。
ロングドリルで残ったVaporiserを削り取る
残念ながら、自作フックツールでは燃料菅に残ったちぎれたVaporiserを掻き出すことはできませんでした。
フックの先端をかなり鋭利に磨けば、Vaporiserに刺すようにして掻き出すことはできるかもしれません。
ちぎれたVaporiserを抜き取るのはあきらめかけたのですが、管理人の職人魂が許してくれず、また3日ほど代替案を考えることになります。
タンクからバーナー部まで燃料の通り道を作ればいいわけですので、燃料菅の内部をまるまるドリルで清掃してみることにしました。
下の写真のように、ドリル部の長さ25cm、径7mmのロングドリルを調達しました。
径8mmのドリル刃では太すぎて給油菅に入りませんでした。
給油菅の中に残ったちぎれたVaporiserを、内側から削り取ってしまおうという作戦です。
一筋の光が覗く
上の写真は径7mmのロングドリルで、ホエーブスNo.9ストーブの給油菅内部を揉んだものです。
おそらくちぎれたVaporiserであろう金属片と、劣化したタールまみれのウィックがそこそこ出てきました。
ドリル先端がコツンと当たるのを確認しながら、給油菅内部をロングドリルを往復させて清掃します。
金属片や汚れが出なくなったらパーツクリーナーで清掃して終了です。
給油菅のバルブ側からライトを当てて内部を覗くと小さな明かりが見え、給油菅内部が貫通したことが確認できました。
Vaporiserをレストアする
ベポライザーは気化した燃料を安定してバーナー部へ送る重要なパーツです。
オリジナルには真鍮製の筒にウィックが挿入されていたようですが、メンテナンスのしやすさを考えてステンレスメッシュを使うことにしました。
ベポライザーのウィックは量が多すぎても少なすぎてもストーブの燃焼に影響します。
オリジナルのベポライザーがない以上、ステンレスメッシュの巻き加減で調整していくしかありません。
下の写真のように細いステンレス線にできるだけ小さく、ステンレスメッシュを巻き付けて筒状にしていきます。
ステンレスメッシュはコールマン製品のジェネレーターに使われている紙管(アスベストチューブ)の代用品としても使えます。
小さく巻くにはバーナー等で焼いてやると腰が弱くなり、巻きやすくなります。
下の写真のような感じで、オリジナルのベポライザーも再利用することにしました。
今後のメンテナンス性を考慮して、ステンレス線を引っ張るとベポライザーが給油菅から引き抜けるようにしました。
バルブ部の詰まりを掃除する
上の写真はコールマン500スピードマスターのジェネレータークリーニングニードルです。
これが今回役に立ちました。
清掃後のホエーブスNo.9を組み上げて点火してみると、やはり最初と同じようにバーナー部が温まるとアルコールが吐出されなくなってしまいます。
どこかで何かが詰まっている感じです。
燃料が一番最後に出てくる場所、給油菅の先端にあるオリフィス(穴)を、下の写真のようにクリーニングニードルでつついてみることにしました。
すると、バーナー部にアルコールとともに黒い煤状の汚れが排出され、アルコールが勢いよく吐出されるようになりました。
管理人はこのタイプのアルコールストーブを使うのは初めてなのですが、燃焼音が静かでいいですね。
火力調整もかなり細かく調整でき、とても100年も前に作られたものとは思えません。
当時のクラフトマンシップを感じます。