上の写真はショップでお預かりしたピークワン2レバーストーブ、モデル400。
ヤフオクで落札後、燃焼はするものの徐々に圧が抜けたような感じになるという症状でした。
実際に点火してみると確かにスムーズに点火はしますが、本来のモデル400の火力ではないと感じました。
燃焼が安定してから追加ポンピングしてみますが、一向に火力が上がる気配がありません。
また、1分ほどでかなりの追加ポンピングができてしまうということは、当初ご連絡いただいた通り圧抜けの可能性が高いでしょう。
考えられる不具合の原因
- 燃料キャップガスケット不良
- 配管接続部の緩み
- ジェネレーターピンホール
- 燃料バルブ不良
燃焼はするものの徐々に圧が抜けたような感じになるという不具合の原因は多岐にわたるため、手はかかりますが一つ一つ考えられる原因を潰していくしかありません。
上記リストをひとつひとつ当たっていきます。
燃料キャップガスケット不良
ポンピングしてしばらく放置しても圧が下がらないため、燃料キャップガスケット不良ではないことがわかります。
配管接続部の緩み
点火時にジェネレータージャムナットからのガス漏れがないことを確認していますので、これも不具合の原因ではないことがわかります。
ポンピングしてしばらく放置しても圧が下がらなかったため、チェックバルブからのエアー漏れも除外できます。
ジェネレーターピンホール
ジェネレーターピンホールは小さいものになるととても見つけづらいですが、水を張ったボールに取り外したジェネレーターを沈め、エアーダスターでエアーを通してやると見つけやすいです。
ジェネレーターピンホールも見つかりませんでした。
燃料バルブ不良
残る不具合の原因は燃料バルブ不良となります。
しばらく使用していないランタンやストーブの場合、フューエルチューブが燃料の残留物や緑青で詰まるケースが多いです。
下の写真のように、燃料バルブを取り外してみます。
液体ガスケットは当時のものではないので、燃料バルブは取り外された形跡があるものの、フューエルチューブは出荷当時のままでしょう。
フューエルチューブが燃料の残留物や緑青で詰まっているだけであれば、分解洗浄で直る可能性が高いです。
多くのモデル400をお預かりしてきましたが、工場出荷から一度もメンテナンスされていない個体は、燃料バルブが上の写真のような状態になっているケースがほとんどです。
フューエルチューブを抜いてみると、下の写真のようにバルブコアも寿命を迎えていました。
フューエルチューブを洗浄し、バルブコアを新品に交換して燃焼確認をしてみます。
フューエルチューブ分解洗浄で直らず・・・
燃料バルブに不具合の原因があることは特定できたので、フューエルチューブを洗浄し、バルブコアを新品に交換して燃焼確認をしてみました。
が、症状は改善されず、当初と変わらず徐々に火力が落ちていく感じです。
綺麗な青火で燃焼しますが、本来のモデル400の火力ではない感じでしょうか。
再度燃料バルブを取り外して細かく見ていきます。
フューエルチューブからカチャカチャと異音がする
上の写真はニードルとスプリング、バルブコアを取り出したモデル400のフューエルチューブ。
モデル400のフューエルチューブには下の写真のようにニードルのある前期タイプとニードルなしの後期タイプがあります。
今回お預かりした個体はニードルのある前期タイプになります。
そしてこのニードル、先端をよく見てみると部分的に細くなっているのがわかるでしょうか。
拡大して見てみましょう。
モデル400の燃料バルブには「LIGHT」と「RUN」の位置がありますが、このくびれは点火時に燃料を絞り、燃焼が落ち着いたら通常の量の燃料を流す役割をしています。
シンプルですが、よく考えられた構造の部品ですね。
当時のモノづくりに対するクラフトマンシップを感じます。
フューエルチューブは二重管構造になっていて、外側のチューブのカシメが甘いとぐらついているものもありますが、動作上は問題ありません。
このフューエルチューブを持った時に「カチャ」という音が聞こえた気がして、再度振ってみました。
すると、外側のチューブがぐらついているわけでもないのに、「カチャカチャ」と音がします。
この段階で一連の不具合の原因が判明しました。
フューエルチューブの内側のチューブが外れており、うまく燃料が吸い上げられず、エアーが外れたチューブの隙間から抜けていたのです。
フューエルチューブの内側のチューブは圧入もしくはねじ込み式になっていて、これまで3回ほど修理のご依頼をいただいたことがあります。
フューエルチューブの修理
カシメを外す
外れたインナーチューブを元通りにするには、まずフューエルチューブのアウターチューブを外す必要があります。
しかし、このフューエルチューブはメンテナンス前提の作りにはなっておらず、簡単にはばらせません。
下の写真のようにアウターチューブがカシメて固定されているためです。
幸いフューエルチューブの素材は柔らかい真鍮製なので、カシメを外す作業はそれほど難しくはないでしょう。
下の写真のようにバイスにフューエルチューブを固定して、サイズの合ったマイナスドライバーとハンマーを使ってカシメを慎重に外していきます。
管理人はホーザンのK-26という小型バイスが使いやすく愛用しています。
ホーザン(HOZAN) マシンバイス 万力 穴開け加工時の保持用バイス 口幅:50mm 最大口開幅:30mm 口高さ:25mm K-26
4か所のカシメを外すと、下の写真のようにフューエルチューブのアウターチューブを外すことができます。
フューエルチューブの構造
フューエルチューブの構造を直接見る機会は少ないかと思いますので、下の写真をよくご覧になってみてください。
上の写真の細い管がアウターチューブの中で本体から外れてしまったために、カチャカチャと異音がしたわけです。
形状からインナーチューブは圧入されていたと推察しますが、将来を見据えて今後外れないよう本体にロウ付けしておきます。
フューエルチューブの再生
上の写真のようにインナーチューブを本体に再挿入し、今後抜けることがないようロウ付けしておきます。
インナーチューブの上からアウターチューブをかぶせて元通りに組み上げます。
アウターチューブをカシメ直す際は、下の写真のように電工ペンチを使うといい感じに仕上がります。
燃焼確認
これで直らなかったらお手上げですが、上の写真のようにモデル400本来の火力で燃焼してくれました。
5分ほど連続運転しても圧が抜けることなく、綺麗な青火で燃焼しています。
コールマン2レバーストーブは交換用ジェネレーターの入手がネックではありますが、未だ人気が衰える気配のない名機です。
今回お預かりした個体もペイント等の状態がよく、ぜひ末永く使ってほしいと思います。
400-5891、508-5891等コールマン2レバー用ジェネレーターはショップに在庫がありますので、お探しの方は覗いてみてください。