オールドコールマンの中でも人気の高いシングルバーナーストーブ、モデル500。
初期のモデルに採用されていた星形八角ゴトクに魅了されたファンも多いはず。
かくいう管理人もそのひとり。
米国工場製のモデル500にはスピードマスター、カナダ工場製のモデル500にはスポーツマスターという商品名が付いています。
特にカナダ工場製のモデル500は個体の絶対数が少ないため、eBayやヤフオク、メルカリなどのオークションやフリマサイトでも高値で取引されています。
今回はeBayで落札したコールマン500、カナダ工場製のパステルグリーンモデルのレストア過程をご紹介します。
予想以上に状態の悪い個体
上の写真はセラーによる梱包で、カナダから米国の倉庫を経由して、ラップぐるぐる巻きで送られてきました。
持ち上げると何やら「シャラシャラ」という音が聞こえてきました。
ポンプアセンブリーのスプリングの音にも聞こえます。
ぐるぐる巻きのラップを剥がしてみると、シャラシャラ音の犯人がタンクの中にいることがわかりました。
そう、タンク内で発生した錆が剥がれて、タンクを傾ける度にシャラシャラと音を出していたのです。
この個体は1947年2月製。
タンクの側面部分は真鍮製ですが、底面のみ鉄製です。
オールドコールマンにはよくあることで、まずはタンクの錆取りからレストアを始めることにします。
コールマン500タンクの錆取り
オールドコールマンの分解には固着がつきものですが、そのあたりも追々ご紹介していきます。
まずはタンクからバルブアセンブリー、チェックバルブ、ポンプアセンブリー等、はずせるものはすべて外します。
タンク内に溜まった錆は、上下左右にひっくり返したり色々な角度でタンクをゆすると、あらかたは排出されるはずです。
給油口やバルブ取り付け部から下の写真のようにエアダスターなどを吹いてやるのもいい方法です。
錆の程度にもよりますが、タンクにホワイトガソリンを入れて何回か濯ぐだけでも、使用に問題ない程度までの錆取りができることもあります。
錆取りをしたばっかりにタンクにピンホールができてしまったというケースも、管理人の場合は少なくありません。
オールド機ではタンク内に生じた錆が、絶妙にタンクのピンホールをふさいでいるケースが多々あるということです。
なので、これからご紹介する錆取り剤等の使用には、こうしたリスクがあることも踏まえて臨む必要があります。
万が一、錆取りによってタンクに穴が空いてしまったとしても、修理可能なのでそこまで悲観的にならなくて大丈夫です。
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オールドコールマン等のタンク内錆取り剤としては、バイクのタンク錆取り等で定評のある花咲かGがおすすめです。
サンポールやクエン酸等でも鉄の錆取りはできるのですが、錆が取れた後の防錆が同時にできる薬剤でないと、タンク内に新たな錆を呼びこむことになります。
つまり、1液で錆取りと防錆ができる錆取り剤を選ばないと、むしろタンクの状態が悪化する可能性もあるということです。
小さなネジやナットをタンク内に挿入して、水やホワイトガソリンを入れて錆落としをする方法もありますが、モデル500に限っては、給油口が小さいため挿入したネジやナットが取り出せなくなる可能性があります。
ネジやナットがタンク内に残ったからと言ってストーブが使えなくなるわけではありませんが、やはり気になりますよね。
一度使うと花咲かGの優れた効果は必ず実感できますので、タンク内の錆が気になる場合には迷わず使ってみてほしいと思います。
今回のモデル500はタンク底面の錆がかなり出ていたため、花咲かGの希釈を10倍程度とやや濃いめにして24時間ほど漬けこみました。
花咲かGの効果のほどは、下の写真を見るとわかりますが、タンク内のあらかたの錆が除去されています。
上の写真の状態はまだいいほうで、ひどい個体になると大きな錆の塊がボロボロと剥がれていたりします。
排出した花咲かGは、パーツの錆取りなどの漬け置きなどに使えます。
できる限りタンク内の錆を取り出す方法としては、下の写真のように水圧を利用する手もあります。
タンク内を水洗いしたあと、タンク内部コーティング用にもう一度花咲かGを適度に薄めたもの(10~20倍程度の希釈)をタンク内にまんべんなく行きわたらせてから排出し完全に乾燥させます。
タンク内の水気を切るには、下の写真のようにエアダスターを使うとあらかたの水分を吹き飛ばすことができます。
一度水を入れたタンクが完全に乾燥するには、自然乾燥でおよそ3~4日、できれば1週間ほど乾燥させたいところです。
急ぎで乾燥させる必要があるときは、下の写真のようにドライヤー等を使うといいでしょう。
今回は他の部分のレストア作業を進めつつ、タンクをドライヤー&自然乾燥させることにします。
バーナープレートとバーナーフレーム
上の写真は今回レストアをしている、モデル500カナダから取り外したバーナープレートとバーナーフレーム。
パッと見そんなに状態は悪くなさそうに思えたのですが、裏返してみると前オーナーの適当な修理痕があり、やや手のかかる修理が必要であることがわかりました。
下の写真を見ていただくとわかりますが、バーナープレートとバーナーフレームをつなぐネジには、頭部が平らなトラスネジが本来使われているはずです。
しかし、前オーナーが適当に手持ちのネジを使ったのか、スクエアビット(四角いドライバー)ネジが無理やりねじ込まれていました。
しかし、手持ちのスクエアドライバーではサイズが合わず・・・。
幸いにもネジの頭が大きいので、ラジオペンチやプライヤーで挟んでも回せそうではあります。
こんな時に活躍するのが、ネジ山をなめてしまったとき用の工具、ネジザウルス。
ネジの頭をガッチリくわえ込んで、横回しだけでなく縦回しにも対応する優れもの。
ネジザウルスでスクエアビットをはずしてみると、下の写真のように1本はタッピングネジ、もう1本はピッチの違うネジが無理やりねじ込まれていたことがわかりました。
なぜにそれぞれ別ネジを使ったのか意味不明ですが、こうしてビンテージオリジナルが損なわれていくのでしょう。
この2本がねじ込まれていたネジ穴は、オリジナルのネジが使えるように修正することにします。
バーナーフレームのネジ穴修正
上の写真はオリジナルと異なるネジが無理やりねじ込まれていたバーナーフレーム取り付け穴。
もともとのネジ穴に金属が残っていることから、前オーナーがねじ切ってしまったものと思われます。
もともとのネジ穴をそのままドリルで再生すればいいはずですが、穴は中心から大きくずれています。
ひとつのネジ穴はタップを切り直すだけでOKでしたが、もう一方は下の写真のように外縁が欠けてしまっています。
欠けてしまったネジ穴の外縁を整え、前オーナーが空けたネジ穴を埋め、オリジナルのネジが使えるネジ穴を切り直すことにしました。
まずは欠けてしまったネジ穴の外縁を整えるために、アルミテープで型を作ります。
欠けてしまったネジ穴の外縁の成型と、前オーナーが空けたネジ穴を埋めてネジ穴を切り直すために選んだ充填剤はJBウェルドです。
2液混合タイプのエポキシ系接着剤ですが、耐熱性もあり硬化後の強度も溶接並みと定評がある充填剤です。
下の写真のように、よく混ぜてから使用します。
乾いたらアルミテープをはがして、面が平らになるようヤスリで成型して、ドリルで新しく穴を開けてタップを立てます。
バーナープレートとバーナーフレームをつなぐネジは、ひとつはねじ切れてしまったバーナーリング取り付けねじを流用、もうひとつは純正品を調達しました。
以降のメンテナンス性を考慮して、熱で焼き付く可能性のあるネジにはスレッドコンパウンドを塗布しておくのがベターです。
ひとつはねじ切れてしまったバーナーリング取り付けねじ、もうひとつは新品の純正ネジですが、下の写真のようにほぼオリジナルの状態に復元できました。
バーナーリング取り付け部の修正
上の写真は今回のコールマン500カナダから取り外したバーナーフレーム。
すでに舐めてしまっているネジもありますが、見るからに回すのに神経を使いそうな状態です。
ネジ部の裏表から浸透潤滑剤ラスペネをたっぷり吹き付けて2日間寝かせておきました。
すでにネジ山をナメてしまっているネジには、幸いにも下の写真のようにネジザウルスが使えました。
しかし・・・。
下の写真のように、すでに舐めてしまっていたネジはあっさりねじ切れてしまいました。
前オーナーもネジをナメてあきらめていたのでしょうね。
管理人の場合、モデル500のバーナーリング固定ネジは何本もねじ切ってきた経験があります。
ラスペネを吹こうがバーナーで炙ろうが、ハンマーでたたこうがショックドライバーを使おうが、ウンともスンともいわないねじは、最終的にねじ切るしかなくなります。
モデル500のバーナーフレームは、下の写真のように裏側からねじ切れてしまったバーナーリング固定ネジをドリルで除去できるので、比較的ネジ穴の再生がしやすいです。
モデル500のバーナーリング固定ネジは、初期のネジとは外観がやや異なりますが現在も純正品が入手可能です。
今後のメンテナンス性を考慮して、焼き付き防止のためにスレッドコンパウンドを塗布してからバーナーリング固定ネジを取り付けるといいです。
下の写真のように、つまようじなどを使うとネジ穴にスレッドコンパウンドを塗布するのが簡単で手も汚れません。
細かいパーツの錆落とし
コールマン500は上の写真ように部品点数も多く、部品の洗浄にはそれなりに手間と時間がかかるものです。
効率的に部品の錆や汚れを落とすには、部品の素材や目的に合わせて効果的なケミカルを使うのがおすすめです。
管理人は100均などで手に入る安価なクエン酸や重曹を、錆取りや汚れ落としによく使います。
ただし、素材によってはケミカルが不向きなものもあるので、下調べはしないとリスキーです。
たとえば、アルミは薬剤で変質、重曹で黒色に変色します。
オールドコールマンに多用されている真鍮は、クエン酸を使うと簡単に綺麗になりますよ。
管理人は下の写真のように鉄製パーツと真鍮部品をクエン酸に漬けこんで、錆落としと洗浄をすることが多いです。
部品をクエン酸に漬けこんだ後は、重曹や中性洗剤で中和することを忘れないようにしましょう。
クエン酸に漬けこんで綺麗になった部品も、そのまま放置すると鉄はすぐに新たな錆を呼んだり、真鍮であれば変色を起こします。
ボールなどに重曹や中性洗剤を少し混ぜた溶液を作っておき、錆落としや汚れ落としの終わった部品をさっとくぐらせるだけで、部品に付着した酸は中和されます。
コールマン500のメンテナンス
今回の個体はタンク内の錆落とし、バーナーフレームのネジ穴再生が主なレストア作業でした。
その他のオリジナル部品は状態がそれほど悪くなかったため、錆落としと洗浄程度で済みました。
コールマン500のメンテナンス記事はブログ内にまとめてありますので、あわせてご覧になってみてください。
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燃焼確認動画
管理人は日々、コールマン500とピークワンランタンモデル222をメインにコツコツとメンテナンスしています。
調子が今ひとつのモデル500や222がありましたら、お気軽にご相談ください。
パーツ交換の必要のないメンテナンスでしたら、往復送料ご負担で5,000円からショップでお受けしています。