独特の星形八角ゴトクにファンの多い、コールマン500スピードマスター。
状態のいいものはなかなかeBayやヤフオクにも出てこないものです。
入手したものがきちんとメンテナンスされた実働品であればまだしも、オールドコールマンを持つということは自身での整備が必須と覚悟しておく必要があります。
今回はオールドコールマンのメンテナンス入門に最適な、インナーディスクを持つ242系小径燃料キャップのガスケット交換についてご紹介します。
3ピースタイプフィラーキャップのガスケット交換は簡単なので、気軽に読み進めてほしいと思います。
3ピースタイプフィラーキャップの分解
キャップ本体、インナーディスク、ネジの3点で構成される燃料キャップは、上の写真のようにタンクに締めこんだ状態でネジを回せば、3つのパーツに分解できます。
通常はですが・・・。
毎日のようにモデル500の整備をしていると、ネジが力任せにインナーディスクにねじ込まれた燃料キャップに出会うことも少なくありません。
また古い個体になると、インナーディスクにねじ込まれたネジがさび付いて固着していたりもします。
そのような場合には、まずラスペネなど浸透性潤滑剤をネジ部に浸透させて様子を見るのがおすすめです。
古い個体の取り扱い全般に言えることですが、錆の固着は焦らずに作業することが成功につながります。
ひどい錆の場合、潤滑剤の浸透を2~3日待つのもひとつの方法なので、手っ取り早く終わらせようとしないことです。
インナーディスクにねじ込まれたネジを回そうとして、下の写真のようにインナーディスクを直接ペンチなどで挟むのはいけません。
給油口とインナーディスクの間にはガスケットが入ることで気密性が保たれる仕組みです。
ガスケットの受け側であるインナーディスクにペンチなどの挟み痕(キズ)が残ると、タンクの圧抜け等の原因になります。
ラスペネなどを吹いてもインナーディスクに固着したネジが回らない場合には、下の写真のようにソフトプライヤーなどで燃料キャップをかなりきつく締めこんだうえで、ネジを回してみます。
管理人の経験上、ほとんどの燃料キャップの固着ネジはこの方法で取り外せるはずです。
この方法で取り外せない場合には、インナーディスクをトーチバーナーで炙って取り外します。
ただし、メッキタイプの燃料キャップをトーチバーナーで炙るのは、メッキを傷めるのでやめておくべきです。
古いガスケットの除去
インナーディスクにねじ込まれているネジが取り外せたら、上の写真のように3つの部品に分かれるはずです。
新しいガスケットを装着する前に、古いガスケットを丁寧に除去してやることで気密性をより高めてやることができます。
そもそも、古いガスケットがカチカチに固くなって残っているケースがほとんどなので、クリーニングなしに新しいガスケットは装着できないでしょう。
インナーディスクの状態確認
上の写真はインナーディスクのネジ側です。
写真のような状態であれば、この面のクリーニングは必要ないでしょう。
続いて裏面。
燃料と空気が直接触れる部分なので、真鍮製品特有の変色と、ガスケットの劣化が見て取れます。
古いガスケットは千枚通しなどを使って除去しますが、運が良ければつつくだけでポロポロと剥がれるように除去できることもあります。
しかし、たいていは下の写真のように千枚通しの先端が欠けてしまうほどカチカチに硬くなっていることが多いです。
オールドコールマンのレストアでは様々な局面で重宝するトーチバーナー。
錆ついて固着したネジの取り外しだけでなく、古いガスケットの除去にも活躍します。
トーチバーナーを使った古いガスケット除去の簡単な方法をご紹介しますので、ぜひ試してみてください。
古いガスケットの除去
古いガスケットはトーチバーナーで焼き切ってやると、簡単に除去できます。
まずは上の写真のように煉瓦など耐熱性のある台と、トーチバーナーを用意します。
管理人はソト(SOTO)製フィールドチャッカーを愛用しています。
できればヤケド防止のために耐熱手袋も用意したいところです。
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古いガスケットを焼き切る
上の写真のように、耐熱煉瓦などの上にインナーディスクのガスケット装着面を上にしておき、トーチバーナーで炙ります。
タイヤなどゴム製品が燃える強烈な臭いと有害な煙が出ますので、必ず屋外で作業しましょう。
30秒ほど炙ればゴム製パッキンは焼き切れるかと思います。
バーナーで炙られることによってブクブクと膨らみ、炭化したパッキンは下の写真のように千枚通しでつつけば、簡単に取り去ることができるはずです。
インナーディスクのクリーニング
新しいガスケットを装着する前に、インナーディスクのクリーニングもしておきましょう。
綺麗になるだけでなく、ガスケットの気密性も高まります。
人によっては「燃料キャップのインナーディスクなんて外から見えないんだから・・・。」と思うかもしれませんが、こういうところをきっちり整備しておくことがビンテージランタンやストーブを長持ちさせることにつながります。
真鍮製品の変色やくすみを取るには、下の写真のように100均などで手に入る安価なクエン酸で適当な濃度の溶液を作り、30分も漬けこめば軽く磨くだけでかなり綺麗になります。
細かいガスケットの残り屑やくすみは、インナーディスクと同程度の硬さの真鍮ブラシなどを使ってクリーニングします。
下の写真のように、新品同様の輝きを取り戻すはずです。
真鍮製品は磨くと本当に美しい輝きを放ちますので、インナーディスクをピカピカにしたいのであれば、ピカールなどの金属磨きを使います。
化学系の金属磨きは真鍮製品に使う分には問題ありませんが、アルミ製の部品に使うと変質することがありますので注意が必要です。
モデル500のガスケット
コールマン500のフィラーキャップ用ガスケット純正品番603-1361は、アフターマーケットで現在も入手可能です。
242系ランタンのフィラーキャップと同じものがモデル500にも装着されています。
アフターマーケットで入手できるガスケットは1個100円ほど。
高くはない価格設定だとは思いますが、作り方を覚えてしまえば買うのが馬鹿らしくなってしまうかもです。
ガスケットにサイズの合った打ち抜きポンチを用意してしまえば、数百円で入手できるNBRシート1枚でかなりの数のガスケットを作成することができます。
燃料キャップのガスケット作成も、コールマン製品のメンテナンス入門にぴったりの作業なので、ぜひトライしてほしいと思います。
ガスケット作成に必要なもの
モデル500用燃料キャップのガスケット作成に必要なものは、以下の通りです。
- 13mm打ち抜きポンチ外径用
- 8mm打ち抜きポンチ内径用
- 1.5mm厚NBRシート
- ハンマー(家にあるトンカチでOK)
- パンチマット(あればベスト)
標準サイズや大径サイズの3ピースタイプ燃料キャップのガスケット作成も手順は同じなので、ポケットノギスなどで燃料キャップやインナーディスクの外径、内径などを測れば、どんなタイプのガスケットも作れるようになります。
打ち抜きポンチ
皮やゴム等の柔らかい素材に穴を開ける工具をポンチ、またはパンチと言います。
日常生活ではベルトの穴あけ等に使うことが多いですね。
英語でPunchと言うため日本語に訳すとポンチ、またはパンチとなるようです。
アフターマーケットで流通しているモデル500用のフィラーキャップガスケットは外径13.5mm、内径8.5mm、厚さ1.5mmのものが多いです。
色々と試行錯誤した結果、厚さ1.5mmのNBRシートを打ち抜いてモデル500用燃料キャップのガスケットを作成する場合、13mmと8mmのポンチ使用に落ち着きました。
作業手順としては最初に13mmのポンチで打ち抜き、センターを8mmのポンチで打ち抜くことになります。
インナーディスクへのフィット感がやや緩くなりますが、外径14mm、内径9mmのポンチで打ち抜いたガスケットもモデル500で使えることを確認しています。
できるだけ手持ちのポンチを使って、足りないサイズのポンチを買い足せば無駄がないでしょう。
これからポンチを揃えるというのであれば、セット買いの方がお得感があります。
燃料キャップのパッキン用素材
上の写真は厚さ1.5mmのNBRシート、サイズ10cm×20cmで購入価格は130円ほど。
スピードマスターの燃料キャップ用ガスケットなら、100個は作れるでしょうか。
なので、ストーブやランタンのガスケットは購入するより自作する方の多い部品のひとつです。
NBRはNitril Butadiene Rubberの略で、一般にニトリルゴムと呼ばれます。
耐熱温度は100°C程度ですが耐油性に優れ、さほど高温にさらされない燃料キャップのガスケット素材としては価格的にも最適な素材です。
購入先としては、10cm×10cmというサイズから取り揃えているモノタロウがおすすめです。
パンチマット
ガスケットを打ち抜く際には、ポンチを傷めない程度の程よい硬さの下敷きが必要です。
木の板などでも代用できるのですが、管理人の経験上パンチマットをおすすめします。
木の板とパンチマットの双方を使い比べてみるとわかりますが、仕上がりと作業効率が劇的に変わります。
高いものではないので、パンチマットはぜひ用意していただきたい道具です。
ガスケットの作成手順
1.5mm厚のNBRシート、外径用のポンチ(13mmまたは14mm)、内径用のポンチ(8mmまたは9mm)を揃えたら、手持ちのハンマー、木の板などがあれば、とりあえずガスケットは作成できます。
ゴムシートを打ち抜くので、固い床の上で作業するようにします。
畳やカーペットのような柔らかい床の上では、ポンチがうまく打ち抜けません。
外径を打ち抜く
まずは上の写真のように、外径用のポンチ(13mmまたは14mm)でNBRシートを打ち抜きます。
内径打ち抜きはセンターがうまく出ないことも多いので、予備として2、3個作っておくといいでしょう。
下の写真のような外径13mmまたは14mmの円形ゴムを打ち抜きます。
内径を打ち抜く
13mmまたは14mmに打ち抜いた円形ゴムを、今度は上の写真のように内径用のポンチで打ち抜きます。
目視でセンター出しをするしかないので、ポンチの外側のガスケットになる部分が均等になるように、打ち抜く前にポンチの位置を微調整します。
下の写真のように、ほぼ均一な幅のガスケットに打ち抜くことができれば完成です。
センターがずれて均一な幅のガスケットにならなかった場合には、予備に打ち抜いておいた円形ゴムで再度挑戦しましょう。
センターがわずかにずれる程度であれば問題なくガスケットとして機能しますが、タンクの気密性に関わる重要な部品ですので、妥協せずに綺麗なガスケットを作成しましょう。
新しいガスケットの装着
ガスケットがうまく打ち抜けたら、上の写真のようにインナーディスクに装着します。
内径8mmで打ち抜いた場合、インナーディスクへの装着がきついと感じるかもしれません。
マイナスドライバーなどを使って、キズをつけないようにインナーディスクに押し込んで装着します。
コールマン純正リュブリカントをガスケットに薄く塗布してやると、楽に装着できるはずです。
ガスケットへのリュブリカント塗布は、ガスケットの寿命を延ばす効果もあります。
インナーディスクにガスケットが装着できたら、下の写真のように燃料キャップにビスで取り付けます。
インナーディスクへのビス止めは、取り外しの時と同じようにインナーディスクを直接ペンチなどで挟んではいけません。
タンクに燃料キャップを締めこんでから、下の写真のようにサイズの合ったマイナスドライバーで適度に締めこみます。
インナーディスク固定ネジはきつく締めこむ必要はありません。
燃料キャップ脱着時にインナーディスクが外れなければいいだけなので、必要最低限の締め込みにとどめましょう。
燃料キャップのインナーディスクは単体で探すと苦労する部品のひとつです。
柔らかい真鍮製なので、ネジ山をナメてしまわないように注意が必要です。
ガスケット装着後は圧漏れチェックを
ガスケットの密閉不良は圧漏れ、燃料漏れ等を引き起こします。
圧漏れ程度ならポンピング頻度が増える程度で済みますが、燃料漏れは火災につながる恐れがあり、たかがガスケットと軽視してはいけません。
ガスケットの圧漏れは外観から判断すること難しいので、管理人はガス漏れ検知剤を使っています。
ガス漏れ検知剤の成分は界面活性剤なので、キッチン用洗剤などでも代用できます。
そこまでしなくてもと思うかもしれませんが、管理人は勘に頼らない整備も大事だと考えます。
燃料キャップ用ガスケットの取り扱いはしていないのですが、コールマン500スピードマスターの未点火品等揃えていますので、ぜひショップも覗いてみてください。