ショップでパーツをお買い上げいただいたお客様から、修理のご依頼。
とろ火ができるストーブとして人気の高い、コールマンの2レバータイプのピークワン576。
40年以上前に製造された76年1月製。
消火に時間がかかることから、フィードチューブ内のバルブコア不良を疑いバルブアッセンブリーをご購入いただきました。
まったく同じパーツの換装なので、特別必要な工具等もなく通常は短時間で終わるメンテナンスです。
しかし、組み付けようとしてもタンクにバルブがねじ込めないと、お客様からご相談があり修理をお引き受けすることになりました。
このページではコールマン576のバルブアッセンブリー組み付け修理をご紹介します。
モデル576ストーブの消火不良
上の写真はコールマン576、400、400Aなどのピークワンストーブのフィードチューブに挿入されているバルブコアという部品です。
ランタンではモデル275に装着されています。
バルブコアは燃料のOn/Offを制御する重要な役割を持っていて、劣化すると燃料バルブをOffにしても消火に時間がかかるようになるので、すぐにわかります。
この場合にはタンク内の圧を抜く等で消化できますが、バルブコアは消耗部品と割り切って早めの交換をおすすめします。
ただ、バルブコアは純正部品としてコールマン社からは提供されておらず、国内外の専門ショップ等から入手することになるかと思います。
今回のお客様も576がうまく消火しないため、原因はバルブコア不良と見てバルブ一式の交換に踏み切ったわけです。
バルブコア不良によるピークワンストーブの消火に時間がかかる問題は、オーナーの間ではごく一般的な症状でバルブコアの交換で簡単に直るケースがほとんどです。
車やバイク等のタイヤに使われる汎用タイプのバルブコアは耐ガソリン性に問題があるものが多く、ランタンやストーブで使用するのはおすすめできません。
お困りの際にはご相談ください。
部品の破損
上の写真はお客様からストーブ本体と一緒に送られてきた、装着されていた576のバルブアセンブリー。
フィードチューブに亀裂が入り折れてしまっています。
この部分の破損が消火プロセスに影響するのかは、この状態では確かめようがないのですが、うまく燃焼しないことは明らかです。
修理には、お客様にご購入いただいたNOSアセンブリーのフィードチューブを使うことになります。
バルブアセンブリーねじ込み部の修正
バルブアセンブリーねじ込み部からタンク内を覗いてみます。
ちょうどバルブアセンブリーねじ込み部の真下にポンプアセンブリーが通っており、これがバルブアセンブリーの装着を妨げているのではと考えられます。
このようなトラブルは、オール真鍮製のバルブアセンブリーモデルに、現行のオール樹脂製バルブアセンブリーを換装する際によくあることです。
オール樹脂製バルブアセンブリーはオール真鍮製バルブアセンブリーに比べて径が太く、ポンプアセンブリーに干渉してしまうケースが多々あります。
上の写真は576タンクのバルブアセンブリーねじ込み部。
よく見るとねじ込み部外縁が左右非対称にも見えます。
つまり、バルブアセンブリーねじ込み部が本来の角度と変わってしまっている可能性があります。
工場出荷時に力任せにねじ込まれて変わってしまったのか、今回のバルブ取り外し時に変わってしまったのかわかりませんが、コールマンランタンやストーブのバルブ基部は意外と簡単に変形してしまう箇所です。
特にオールドモデル場合、現在のようなシール剤ではなく接着剤が塗布されたバルブをねじ込まれているので、取り外しにはトーチバーナー等でネジ部の接着剤を溶かすという工程が必須です。
もともと装着されていたバルブもねじ込めなくなってしまったということでしたので、フィードチューブをはずしたバルブボディのみをねじ込んでみます。
上の写真のように、もともと装着されていたバルブボディはねじ込むことができました。
これでバルブアセンブリー自体の取り付けはできるとわかりました。
次にバルブボディにフィードチューブを装着し、アセンブリーとしてねじ込めるか試してみます。
フィードチューブがついたバルブアッシーの状態では、上の写真のようにフィードチューブとポンプアセンブリーが干渉してしまうのか、斜めにしかバルブを装着できそうにありません。
バルブボディは柔らかい真鍮製なので、強引にねじ込むこともできるでしょう。
しかし、今後のメンテナンス性を考えるとオリジナルの状態に戻したいところです。
576は鉄製タンクなので下の写真のように専用の治具を使いますが、バルブ取り付け部の角度を微調整しながら、スムーズにバルブアセンブリーがねじ込めるように修正します。
バルブアセンブリーの組付け
タンクとバルブのネジ部に付着している接着剤を丁寧に除去してから、バルブアセンブリーを取り付けます。
バルブボディにねじ込むフィードチューブは、ねじ込み具合がバルブコアと連動するため、何度か仮組みをして燃料バルブ(赤レバー)の「LIGHT」と「RUN」との位置を調整します。
燃料バルブが「OFF」の位置で、きちんと燃料とエアの吐出が止まる位置も、このフィードチューブのねじ込み具合で決まります。
そのため下の写真のように、液体ガスケットを薄く塗布してやれば、バルブボディとフィードチューブの気密性を保ったままねじ込み具合の微調整が可能になります。
柔らかい真鍮製のパーツを扱う際には、ペンチやプライヤーで直にパーツを挟むとかなりのキズが付くことになります。
ソフトプライヤー等では金属パーツの場合、滑ってうまく挟めないことも多いです。
下の写真のように使い古しの皮ベルトの切れ端等、皮のハギレを噛ませてやると、金属パーツに傷をつけることなく、しかもかっちりと挟むことができますので試してみてください。
バルブねじ部にも液体ガスケット、もしくはシールテープを巻いてタンクにバルブアセンブリーをねじ込みます。
使い古された個体になるとバルブ側もしくはタンク側のネジ部の摩耗によって、液体ガスケットではネジ部が回りきってしまうケースもあります。
つまり、もう少しきつく締めこみたいのにネジ部が足りないというケースです。
そのような場合には液体ガスケットではなく、シールテープの巻き具合でネジ部の厚みを調整してやるといいです。
今回お預かりした576はとてもきれいな状態でネジ部の摩耗もなく、下の写真のように液体ガスケットを使ってバルブアセンブリーを取り付けました。
修理完了後の確認画像
今回お預かりした576は、お客様にて分解された状態でお送りいただきました。
ショップで作業させていただいたランタンやストーブは、すべて正常に使用できるかテストしてからご返送しております。
組み立てながら、やはりこの時代のストーブには当時のクラフトマンシップを感じずにはいられませんでした。
単純な構造ながら長く使えるオールドコールマンは、やはり素晴らしいと思います。
燃焼確認動画
上の映像では、使用燃料でジェネレーターを温める代わりにトーチバーナーを使ってプレヒート(予熱)しています。
大きな赤火が上がることなく、スムーズに青火で着火しますので、点火後にポンピングし続けるよりも早く炎が安定します。
点火直後の大きな赤火が怖いという場合や、煤汚れが気になる場合にはトーチバーナーを使った点火方法がおすすめです。
修理のご依頼
Outdoor Fanでは、オールドコールマンの修理をお受けしています。
管理人の専門はホエーブス625/725、コールマン222/500ですが、不具合箇所や状態によっては他のモデルについても修理をお受けしています。
調子の悪いストーブやランタンがありましたら、お問い合わせよりご相談ください。