上の写真はなかなかお目にかかれないホエーブスNo.34アルコールストーブの実働品。
重力加圧式で燃料の重さによってバーナー部に流れてくるアルコールを気化させて燃焼するストーブです。
1900年代にオーストラリアで作られた、とてもシンプルな構造のストーブです。
タンク素材には人類史上はじめての合成樹脂、ベークライトが採用されています。
バーナー近くにプラスチック素材は・・・という気もしますが、ベークライトは熱硬化性樹脂で耐熱温度は150~180℃もあり、直接炎が当たるようなことがなければ大丈夫そうです。
スロベニアから到着時の状態
このホエーブス34はeBayで落札し、はるばるスロベニアからやってきたのですが、到着時は上の写真のようにタンクの付け根部分が斜めにひしゃげてしまった状態でした。
もう少し頑丈な箱を使ってくれていれば・・・と思わずにはいられません。
海外の方の梱包は日本人のそれとはずいぶん違いを感じることが多々あります。
海外から届く荷物の半分ほどは、中身がランタンであれストーブであれ「箱に入っていればOK」という感じで届きます。
今回も緩衝材は割と多く使われてはいましたが、そもそもの箱の強度がなさすぎでした。
日本郵便の箱補修済みシールが貼付されていましたので、輸送中に潰れてしまったのだと思います。
ホエーブス34の状態の良い個体はなかなか見つからないだけにショックでしたが、気を取り直してレストアにかかります。
まずは分解洗浄
古い個体のレストアは何をおいても分解洗浄から。
ネジ部にはラスペネなど浸透性の高い潤滑剤を吹いてから、慎重に。
回らないと思ったら、管理人の場合2~3日潤滑剤の浸透を待つこともあります。
屋内で作業するなら無臭性のラスペネがおすすめです。
ベークライトタンク
製造から100年以上経っているストーブなので、ベークライト製タンクもさすがに劣化していそうですが、ネジ部の損傷もなく目立つキズや欠けのない、とても状態の良いタンクです。
「PHOEBUS」のエンボス文字もいい感じですよね。
ホエーブスNo.9などの真鍮タンクとはやや異なる趣もいいです。
バーナー部
ホエーブスのアルコールストーブは、上の写真にある黒い受け皿に溜めたアルコールでプレヒートして点火します。
オリジナルは艶あり塗装ですが、おそらく耐熱塗料ではないものと思われます。
今回は艶消しの耐熱ブラック塗装としました。
受け皿こそ錆びてはいたものの、ネジやステーなどの部品に変形なく、バーナーキャップも磨いて綺麗になりました。
ジェネレーター
上の写真は荷物の到着時にひしゃげてしまった部分を修正したジェネレーター。
やはり燃料タンクへつながる根元の部分にクラックが入ってしまったようで、下の写真のようにロウ付けでクラックを埋めることにします。
下の写真がクラックを埋めたジェネレーター。
ベポライザーの作成
上の写真はホエーブスNo.34のオリジナルベポライザー。
今回レストアする個体から、時間をかけて丁寧に取りだしたものになります。
錆と煤で真っ黒でしたが、パーツクリーナーとクエン酸、中性洗剤を使って洗浄しました。
中古のホエーブスアルコールストーブから、ベポライザーをスムーズに取り出せることはほぼないです。
たいていは朽ちてしまっていることが多く、引っ張り出す際に針金がちぎれて取り出すのに難儀します。
今回取り出せたベポライザーは採寸用に取っておくとして、リプレースメント品を作成します。
ホエーブスNo.34のジェネレーター管内径は約7mmなので、下の写真のように7mmのアルミパイプをパンチング加工します。
パンチング加工したアルミパイプの中には燃料を気化させるための素材を挿入します。
ベポライザーとして毛細管現象を生じる素材であれば何でもいいのですが、今回は下の写真にあるアルコールストーブ用のガラス繊維5mm芯を使ってみることにします。
オリジナルのベポライザーと大体同じ長さになるように、下の写真のように取り出し用ワイヤーも加工します。
ベポライザーの取り付け
作成したベポライザーのリプレースメント品は、上の写真のようにジェネレーター管に挿入します。
この時点でひっかかりがあるようだと後々取り出しに苦労することになりますので、加工時のバリもしくは必要に応じてジェネレーター管内部のバリもやすりなどで取り除きます。
ベポライザーをセットしたら、下の写真のようにネジ部と面一に収まるか確認します。
上の写真のようになっていれば、以降のメンテナンス時にベポライザーを容易に引き抜くことができます。
レストア完了後のホエーブスNo.34
ホエーブスNo.34レストア完了後の燃焼確認
【ホエーブスアルコールストーブの使用方法】
1. 燃料タンクにアルコールを入れます。
2. バルブを反時計回りに開き、バーナー受け皿にアルコールを適量溜めます。
3. バルブを時計回りに閉めて、受け皿のアルコールに点火、プレヒートします。
4. プレヒート用のアルコールが燃え尽きる前にバルブを開きます。
5. バルブの開閉で火力をコントロールします。
6. バルブを時計回りに完全に閉めて消火します。