かつて社会人山岳クラブや高校、大学山岳部の標準装備でもあった登山用ストーブの代名詞といえば、オーストリア製シングルバーナーのホエーブス。
特に日本のアルピニストからは、頑丈かつコンパクト、さらに壊れにくいことから絶大な信頼を得ていたストーブです。
かくいう管理人もホエーブス愛好家のひとり。
高校生のときに買ったホエーブス725を35年以上現役で使い続けています。
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ホエーブス725|30年以上現役で活躍する登山ストーブの名器
高校生の時分に始めた登山で愛用していたガソリンストーブ、ホエーブス725を親に買ってもらったのは、かれこれ30年以上前になるでしょうか。 当時は単独行、もしくは親友と二人で山に行くことが多かったので、 ...
当時は燃料タンクの大きな625が欲しかったのですが、高校生のお小遣いでは2,000円ほど安い725を選択するしかありませんでした。
しかし、個体の絶対数が少ない725のほうが希少性が高く、オークションなどでも725は625よりも高値がつくケースは多いです。
1992年に製造が終わったホエーブスストーブですが、未だ根強いファンを持ち、昨今のキャンプブームもあって登山以外でも人気のあるストーブです。
そんなホエーブスストーブについてのお話を少しばかり・・・。
大ブスと小ブス
上の写真左が625、右が725で、登山家たちからはそれぞれ大ブス(大きいホエーブス)、小ブス(小さいホエーブス)という愛称で親しまれていました。
そこの大ブス、片付けておけよ。
山でのこんなやりとりに、不機嫌な顔をする女性がいたとかいないとか・・・。
加圧ポンプのついた625は多人数での山行の共同装備、自動加圧式の725は単独行や少人数での山行に使われてきました。
現在のアウトドアストーブといえばカートリッジガス式が主流ですが、昨今のキャンプ、グランピングブームでホエーブスに限らずオールドコールマンなど、ビンテージストーブの人気も高まっています。
バイクのソロツーリングに725を携行する愛好家もいて、煤は出ますが赤ガス(自動車用ガソリン)で使用しているケースもあります。
ホエーブスに限らず液然ストーブには点火前にプレヒート(予熱)が必要なものが多いですが、愛好家はそうした事前の準備を「儀式」と呼んで楽しんでいるものです。
頑丈な鉄製タンクがホエーブス唯一の弱点
頑丈な鉄製タンクにくわえ、構造がシンプルゆえ壊れにくいのがホエーブスの利点ですが、決定的な弱点があります。
それは燃料タンクが鉄で作られていることです。
登山行などでは使用後テントの外に置かれることも多かったホエーブスは、手入れを怠るとあっという間にサビサビになってしまうのです。
タンクには塗装もしてありますが丁寧な仕上げと呼ぶには程遠く、個体によっては塗料垂れがあったりします。
タンクに穴があいてしまうと大がかりな修理になってしまうことが多く、ホエーブスはとにかく錆に気を遣った保管が大切です。
久々にホエーブスのマイコレクションの数を数えてみたのですが、いつの間にか74台ものホエーブスが家に埋もれていることが判明しました。 あまりに増えすぎてしまったコレクションを整理するため、最近はPhoe ... ワコーズのタンクライナーでタンク内側からガッツリ4回もコーティングしたホエーブス625が、再度燃料漏れで修理に戻ってきました。 タンクシーラーを使ったホエーブス625タンクのピンホール修理については、 ...
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ホエーブスのプレヒートはバーナーの付け根にあるくぼみにアルコール等を垂らして行うのが一般的ですが、上の写真のようにだんだんと傷んできます。
プレヒート時の燃焼で予熱部分の塗装が使用するたびに劣化していき、そのうちタンク素材の鉄がむき出しになります。
プレヒートによるストーブ本体の傷みを防ぐには、アルコール等のプレヒート燃料を使わず、トーチバーナーで直接バーナー部を加熱するのがおすすめです。
ホエーブスを整備していくうえで、タンクからバーナーを取り外す際にもトーチバーナーで炙ってやると、すんなりはずせることが多々あります。
市販のカセットガスが使える安価なトーチバーナーで十分なので、ひとつ持っておくとストーブのメンテナンスに重宝します。
トーチバーナーを使ったホエーブスのプレヒートも動画にしてありますので、ご覧になってみてください。
コールマンのストーブやランタンも、点火前にジェネレーターを予熱してやると、煤が出たり火柱が上がることなくスムーズに点火できます。
725の遮熱板にはリプロ品も
625のタンクとバーナー部は十分に距離があるため、燃焼によってタンクの温度が上がり過ぎることはあまりありません。
長時間強火を使う等、使い方によってはタンクの内圧が上がりすぎることがありますが、625にも725にも内圧を逃がす安全弁がついています。
ただ、内圧を逃がす際に安全弁から出てきた気化状態の燃料に引火して、2バーナーのような状態になることが725ではよくあります。
そのため、725には燃料タンクに覆いかぶさるような遮熱板が付いています。
旧旧型には鉄製の遮熱板が付いていた時代もありましたが、多くはアルミ製の遮熱板が付いています。
管理人は知識不足からアルミ製の遮熱板にパーツクリーナーを吹きかけてしまったことがあり、遮熱板を溶かしてしまった苦い経験があります。
アルミ素材は薬品で変質、重曹で黒変してしまうので気をつけましょう。
入手しやすい金属磨きのピカールはアルミ素材に使ってもOKです。
希少な当時物の725アルミ遮熱板を溶かしてしまったショックは大きかったのですが、調べてみるとアフターマーケットでPhoebus 725用遮熱板が販売されていることがわかりました。
素材も錆や汚れに強いステンレス製で、予想以上に良い製品だと思いました。
725を遮熱板なしで注意しながら使うという選択肢もありますが、下の写真のように少しステンレスが焼けた感じの色合いも気に入っています。
リプロダクション品のPhoebus 725用遮熱板はアマゾン経由で購入できます。
既存の遮熱板と差し替えるだけで無加工で装着できますので、遮熱板欠品の個体などにもおすすめです。
ただ、大量生産品ではないので、しょっちゅう在庫切れになります。
新型ホエーブス625未点火品
高校生の時には経済事情で買うことができなかった625を、大人になってようやく買うことができるようになりました。
入手した新型ホエーブス625未点火品は韓国のアウトドアショップが在庫していたものです。
韓国でも625より725の方が価格が高いそうです。
ホエーブス愛好家は日本だけではないようで、オーストリアから巡りめぐって私のもとにやってきた道程を考えるだけでも1日が終わりそうです。
この625はショップに出品していますので、欲しい方がいらっしゃればお譲りできます。
ホエーブスストーブ625、725、コールマンピークワンランタンモデル222、モデル500スピードマスター中心のネットショップを運営しています。
コールマン400ストーブ用ジェネレーター508-5891や、576用ジェネレーター505-5571などレアな廃盤パーツを在庫していることもありますので、ときどき覗いてみてください。