ニッケルメッキの状態がよさそうなコールマン500をeBayで見つけ落札できたのは良かったのですが、その後忙しくて部屋の隅にしまったままにしてあったのを思い出しました。
落札したのは5ヶ月ほど前だったでしょうか。
到着してから検品すると大きなダメージもなく、出品前にメンテナンスされたような形跡もあり、ポンピングすると圧もかかるし、ジェネレーターからエアの吐出音もあったので上玉をゲットしたぜ!と喜んだ記憶があります。
最近ようやく趣味に費やす時間ができたため、このコールマン500に火をともしてみるかと燃料を入れてみると・・・。
燃料ダダ漏れじゃんか
eBayの悪徳セラーにしてやられた感のショックが大きく、1時間ほど落ち込みました。
落札額が30,000円ほどと、結構な金額でしたので・・・。
オークションで落札した商品は、受け取ったらすぐにチェックしないとダメですね。
そもそも「Sold as is」、つまり現状渡しと商品説明にあるものをeBayで落札した場合、例えば今回のような燃料漏れは返金対象になるのかどうか・・・。
「Sold as is」はヤフオクでいうところの「ジャンク品」に当てはまるような気がします。
しかし、今回のブツはひどい・・・。
燃料が漏れるというよりも、流れ出ちゃってますよね。
いつまでも落ち込んでいてもしょうがないので、このスピードマスターのタンクに入ったクラックを直してみることにしました。
タンクに入ったクラックを直してくれるショップはない
「コールマン タンク ひび 修理」などで検索するとわかりますが、クラックによる燃料漏れを起こしたランタンやストーブの修理をしてくれるサイトはまずヒットしません。
それはなぜか?
危険だからです。
コールマンのサポートデスクなどに問い合わせると、クラックによる燃料漏れを起こしたタンクはすべて交換するよう言われるはずです。
コールマンなどアウトドアメーカーだけでなく、ランタンやストーブの修理を請け負うショップでも、タンクのひびを修理してくれるところはまずないと思います。
バイクや車の燃料タンクと違って、ランタンやストーブのタンクには高い内圧がかかるため、中途半端な修理では使用中に再びクラックが入り燃料が噴出、引火して火だるまということにもなりかねません。
そういった責任問題に発展するリスクが高いため、タンクに入ったクラックを直してくれるショップがないのです。
このページでは、タンクにクラックの入ったコールマン500スピードマスターを、内側からシールする方法で修理する方法をご紹介します。
しかし上述したように、一度クラックの入った燃料タンクを修理して使うと、使用中に再びクラックが発生するリスクを伴います。
もしも、同じ方法での修理を検討するのであれば、リスクを伴うことを理解したうえで実行してください。
ランタンやストーブの修理に使えるタンクシーラー
タンクに入った亀裂は高い強度が得られる溶接、ロウ付け、半田つけといった外側から修理する方法もあります。
しかし、このスピードマスターのようにきれいなメッキが施されたタンクに傷はつけたくないものです。
近年ビンテージランタンやストーブのタンク補修に使われているのが、タンクシーラーと呼ばれるコート剤です。
もともとバイクや車の燃料タンクを錆から守るために開発された商品ですが、ランタンやストーブのタンクに空いたピンホールやクラック補修にも使えるため、アメリカのコレクターの間ではメジャーな修理方法です。
よく使われるタンクシーラーとしてはKITACOブランドでも販売されている米国製POR-15、日本製ではワコーズからタンクライナーという製品がリリースされています。
タンクシーラーの種類と特徴
燃料タンクを内側から補修するシーラーには、おもにウレタン系とエポキシ系に分かれます。
ウレタン系のタンクシーラーは取り扱いが楽なこと、価格が安いことがメリットです。
対してエポキシ系は2液を混合する必要があること、価格が高いというデメリットがありますが、重ね塗りができるという利点があります。
ウレタン系のPOR-15
POR-15は缶のふたを開けてかき混ぜて使うだけという、手軽さが特徴です。
しかし、一度開缶して空気に触れたシール剤は再利用できないので、ランタンやストーブのタンク補修ではかなりの量が無駄になると思います。
また、ウレタン系の塗膜を形成するため経年による収縮が懸念されます。
ただ、ランタンやストーブのタンクのクラックを補修するには十分な量のシーラーが3,000円ほどで買えるというのは魅力です。
エポキシ系のタンクライナー
ウレタン系のPOR-15に対して、ワコーズのタンクライナーはエポキシ系のタンクシーラーです。
エポキシ系のシーラーは主剤と硬化剤を混合して使うタイプで、硬化後の収縮が起こらないのが最大のメリットです。
主剤と硬化剤を混合しない限り硬化しないので、必要な分量だけを使用できるという利点もあります。
また、小さな穴やひび割れの充填等にも適しており、タンク内側からピンホールやクラックの補修をするのにもってこいのタンクシーラーと言えます。
クラック修理にはタンクライナーがおすすめ
燃料がじわじわ漏れるピンホール程度なら、安価なウレタン系のタンクシーラーでも事足りると思います。
ただ今回のスピードマスターのようにタダ漏れするほどのクラックは、タンクシーラー硬化後の収縮が懸念材料になります。
時間が経っても充填効果に影響のないエポキシ系のタンクシーラーを選ぶことで、シーラーの収縮による再クラックの発生リスクを減らすことができます。
値段はPOR-15の倍以上するのですが、安心を買うつもりで今回はワコーズのタンクライナーを使用することにしました。
コールマン500へのタンクライナー施工
- ばらしてタンクのみにする
- マスキング
- シーラーの注入
- 加熱乾燥
- 2回目を施工する
step
1ばらしてタンクのみにする
スピードマスターのフューエルチューブ&バルブボディは、個体によっては一度も分解されていないものもあり、オリジナルでは接着剤のようなものを塗布されてタンクにねじ込まれています。
そのためタンクからフューエルチューブ&バルブボディをはずすのに苦労することも少なくありません。
力任せにはずそうとするとパーツがゆがむ可能性があるので、下の写真のようにトーチバーナー等でバルブボディを熱し、接着剤のようなものを溶かしてやるとすんなりはずせます。
タンクのフューエルチューブ&バルブボディのねじ込み部分に残った接着剤のようなものは、千枚通しなどで丁寧に除去します。
異物が残ったままだと、うまくシールできないことがあります。
少しずつしか除去できないので面倒くさい作業ですが、ここは手を抜いちゃいけない部分です。
step
2マスキング
タンクライナーは2液混合使用のエポキシ系タンクシーラーです。
主剤と硬化剤を混ぜた瞬間から塗膜の硬化が始まります。
そしてひとたび硬化してしまうと、強力な溶剤を使っても塗膜の除去ができないぐらいカッチカチに固まります。
なので、シーラーを流し込む燃料口など、シーラーが付着してはいけない場所を確実にマスキングします。
万が一、タンク表面に垂らしてしまった場合などは、すぐにシンナーなどで拭き取らないと二度と塗膜は除去できなくなるので注意が必要です。
コールマン500は燃料口が小径なので、下の写真のようにファンネルを使ってタンクライナーを注入することにしました。
step
3シーラーの注入
タンクライナーは主剤8、硬化剤2、つまり4:1の比率で混ぜて使用します。
主剤は缶底に顔料が固まっているので、泡立てないように割りばしなどでよくかき混ぜます。
主剤40ml、硬化剤10mlをタンクライナー付属の計量カップで測ります。
泡立てないよう静かに撹拌してから、ファンネルを使ってスピードマスターのタンク内部に注入します。
タンクシーラーをタンク内部にまんべんなく回すため、傾けた際にあふれ出ないようアルミテープなどで燃料口をふさいでおきます。
3回転ほどタンクを回してタンクシーラーがタンク内部全体に行き渡るようにします。
スピードマスターの場合、余ったタンクシーラーはおおむね燃料口から抜き取ることができました。
step
4加熱乾燥
タンクライナーは塗布後、自然乾燥だと完全硬化まで2日以上放置する必要がありますが、70~80度の加熱乾燥をしてやることで硬化時間を20~30分に短縮できます。
今回は近所のスーパーからもらってきたダンボールを加工して、下の写真のようにヘアードライヤーで加熱乾燥処理をしました。
説明書にも記載がありますが、30分の加熱乾燥後、竹串でタンクの底をつついてみたところ、カッチカチに硬化していました。
step
52回目を施工する
今回はタンクのピンホールではなくクラックによる燃料漏れだったため、さらに内圧に耐えられるようタンクライナーを2回施工することにしました。
1回目を施工すると、下の写真のようにクラックからタンクシーラーと思われるグレーの物体が顔を出しました。
おそらく、タンクシーラーがうまくクラックに入り込んで表面に流れ出てきたものと思われます。
この状態で固まってくれれば、うまくクラックがふさがってくれそうです。
同じ手順でもう1回タンクライナーを施工しました。
タンクライナーの効果やいかに
タンクライナーを2回施工した後、タンク表面のクラックからはみ出してきたシール材をシンナーで落とし、メッキが剥げないよう気をつけながら少しだけピカールで研磨しました。
上の写真のように、よく見るとうっすらと縦にクラックが入っているのがわかります。
ドキドキしながら修理の終わったスピードマスターにホワイトガソリンを入れ、とりあえずポンピングで圧をかけてみます。
50回ほどポンピングしてみましたが、タンクの下に敷いたダンボールに燃料が浸み出してくる気配はなく、思い切って点火してみました。
無事綺麗な青い炎がともり、「シュシュシュシュ」という独特の心地よい燃焼音を聞くことができました。
タンクにクラックが入ってしまったランタンやストーブをただの置物にする前に、タンクシーラーを試してみるのもいいかもです。
ただし、燃焼中の液然ストーブやランタンが燃料漏れを起こしたらどうなるかの怖さを知っている人限定でお願いします。