高校生の時分に始めた登山で愛用していたガソリンストーブ、ホエーブス725を親に買ってもらったのは、かれこれ30年以上前になるでしょうか。
当時は単独行、もしくは親友と二人で山に行くことが多かったので、簡単な食事が作れる程度のコンパクトなストーブが欲しかったのです。
若いころ登山をしていた父親に相談すると、『登山用具の研究』という本を本屋で見つけてきてくれました。
もともと山に興味を持ったのも、父親と行った丹沢がとても印象的だったからなんですね。
『登山用具の研究』には、単独行やグループ登山で持つべき装備と使い方が詳しく紹介されていて、自分に合っているストーブはホエーブス725だと思いました。
当時1万円以上した記憶はあるのですが、正確な金額は忘れてしまいました。
お小遣いという制度がなかった我が家の場合、自分ではホエーブス725を買うことはできず、父親に頼み込んで買ってもらったのです。
ちなみにホエーブス725、ひとまわり大きい625の年代別値段推移については、日本でのホエーブスというページに変遷が紹介されています。
ホエーブスは壊れない
『登山用具の研究』にも書いてあったのですが、ホエーブスは構造がシンプルでとにかく壊れない信頼できる頑丈なストーブです。
大きなメンテナンスが必要になった記憶がありません。
ホエーブス725を手に入れてからというもの、登山だけにとどまらず、サイクリングやキャンプには欠かせない道具のひとつになりました。
高校三年の夏に学校を退学してからはホエーブスの出番はなくなってしまったのですが、それまで一度も壊れることなくノーメンテナンスで使い続けることができました。
そして50歳を目前に、倉庫整理で出てきたホエーブス725と再会することになったのです。
43歳から始めたスカイダビングに毎週末出かけるようになり、降下場でBBQをするのにいいなと思い、実家のどこかにしまってあるはずだと探してみたのです。
30年以上経った残ガソリンでも正常燃焼
よくぞ捨てずに取っておいてくれたと実家の両親には感謝をしたいですね。
湿気の多い倉庫ではあるものの、缶ケースもさほど錆びておらず、ホエーブス725本体もしまった当時のままでした。
タンクには30年以上前に入れたホワイトガソリンが入ったままで、燃料タンクのキャップを外してにおいを嗅いでみると、正常なホワイトガソリンのにおいがしました。
30年以上も燃料を入れっぱなしのガソリンストーブが、そのままノーメンテで正常に着火するとは思えないのですが、プレヒートをして点火してみることにしました。
プレヒート用のアルコールも、ホエーブス725と一緒に30年以上私が見つけるのを待っていたことになりますね。
パッキン類の劣化が心配ではあったものの、何の問題もなくホエーブス725特有の轟音を響かせながら綺麗な青い炎を上げ始めたときは感動しました。
当時を思い出して懐かしむとともに、あらためてホエーブスの信頼性の高さを思い知らされることになりました。
アルミ遮熱板の悲劇
30数年来ぶりに再会したかつての登山の相棒ホエーブス725を、ことあるごとに持ち出して再び使用するようになったのは言うまでもありません。
アルミでできた遮熱板はこれまで一度もクリーニングすることなく使ってきたのですが、下調べせず車用のパーツクリーナーを使用したのが大失敗でした。
調理でついてしまった焦げを落とそうと遮熱板にパーツクリーナーを吹きかけたところ、遮熱板がふにゃふにゃと柔らかくなってしまったのです。
自動車部品にはアルミパーツも多用されているから、汚れ落としが簡単にできるだろうとパーツクリーナーを安易に使うべきではなかったんですね。
調べてみるとアルミは薬剤に弱いらしく、パーツクリーナーを使うと材質が変色、変質してしまうことが分かりました。
また、アルミは重曹を使うと黒変してしまうらしく、洗浄方法にはデリケートな対応をする必要がありそうです。
アルミ素材にパーツクリーナーを使ってはいけません。
アフターマーケットパーツも流通
パーツクリーナーで溶かしてしまった遮熱板をアルミ板で自作しようかと調べていたところ、アマゾンでステンレス製のホエーブス725用反射板を見つけました。
さらに、ホエーブス725の代名詞といってもいいローラーバーナーの轟音対策として、サイレントバーナーヘッドがアフターマーケットで流通していることも分かりました。
すでに製造メーカーもなくなり廃盤となってしまったストーブのパーツが、未だに進化を続けているなんてロマンを感じずにはいられません。
ホエーブス725のサイレント化には、バーナーヘッドの加工と625のサイレンサーを併用することでできるのは知っていましたが、できればオリジナルの状態を残しておきたいものです。
ステンレス製の遮熱板は国内メーカーが作ったもので、サイレントバーナーヘッドは海外のメーカーが作っているんですね。
遮熱板は2,500円、サイレントバーナーヘッドは本体価格50ドルと送料30ドルほどで入手することができました。
遮熱板をステンレス製の新しいものにすることで、とても30年以上使い続けているとは思えないほど、ホエーブス725が蘇ったように見えます。
海外から入手したサイレントバーナーヘッドも725本体を加工することなく取り付けることができ、会話さえままならなかった使用時の轟音が驚くほど静かになりました。
ローラーバーナーの轟音を聞きながら1日の疲れを癒すという方にはもの足りないかもしれませんが、一度このサイレントバーナーヘッドを使ってしまうとローラーバーナーには戻れない気がします。
ステンレス製の遮熱板もサイレントバーナーヘッドもたまにヤフオクで見かけますが、買って損はないものですよ。
ホエーブス725を手に入れる前に
もしも、これからホエーブス725を手に入れたいと思っているなら、自分でメンテナンスができることが前提条件になると思います。
観賞用として飾っておくというのならともかく、使い続けるには定期的なメンテナンスが不可欠です。
しかし、ホエーブスの純正パーツ供給はとっくに途絶えていて、ヤフオクやメルカリなどで主要パーツが出品されると高値で落札されているというのが現状です。
ただ、幸いにもホエーブスファンは多く、メンテナンス方法についてはネットで検索すればたいていの情報は見つかります。
パッキンなどの消耗部品を自作している人も多く、よほど重要部品が完全に壊れない限りは使えなくなるということはないんじゃないかと思います。
ホエーブス自体がなかなか壊れることがないシンプルな構造のストーブなので、入手時に程度のいいものを見極めることができれば、私のホエーブス725のように一生ものになる可能性が高いはずです。
オークションやフリマサイトでホエーブスを買うのなら、以下のような項目をチェックしてくといいでしょう。
- タンクの底が錆だらけでないか。
- クリーニングニードルが折れていないか。
- 欠品している部品はないか。
特にクリーニングニードルについては、アフターマーケットパーツもなく、現存しているスペアパーツがヤフオクやメルカリなどでたまに流通する程度であるため、ホエーブスを使用していくうえで重要なパーツと言えます。
年式によって適合はあるものの、ヤフオクやメルカリでホエーブスのクリーニングニードルを見かけたら、迷わずゲットしておきたいところです。
2019年6月追記
クリーニングニードルの旧旧型用、旧型用、新型用リプロ品がオールドキャンプストーブストアで販売されています。
旧旧型用、旧型用のクリーニングニードルはテーパー型、新型用はストレート型という違いがあるので、購入にあたっては持っているモデルの確認が必要です。
ホエーブス725の入手先
新品未使用のホエーブスがヤフオクやメルカリでたまに出品されていますが、落札額はやはり高額です。
未使用品にこだわるのもありかもしれませんが、程度のいい中古品なら1万円前後から見つかりますよ。
さらに海外のオークションサイト、eBayまで視野を広げれば日本ではなかなかコレクターが手放さない旧旧型の出品に出会うこともあります。
ヤフオクやメルカリで思うような金額帯のホエーブスが見つからないなら、eBayで探してみるのおすすめです。
送料を含めても日本で買うよりリーズナブルなホエーブスも多いはず。
30数年ぶりにホエーブスの魅力にはまってしまい、私の保有するホエーブスは17台にもなってしまいました。
製品が壊れないがために売り上げが伸びず、会社が廃業に追い込まれるという皮肉な歴史を持つホエーブスストーブ。
いまだ愛好家が多いことに驚きを感じるととともに、30数年前の高校時代に間違いなくいいものを買っていたという自分を少し褒めてやろうかと思います。
私にとってホエーブス725は、一生使い続ける道具のひとつであることは間違いないでしょう。
手軽なカートリッジガス式ストーブ全盛の今、あえて手のかかるストーブもいいものですよ。
入手したままでは使えなかった状態の悪いホエーブスを、コツコツとレストアしていく過程も楽しいものです。
レストア完了後、家での行き場に困ったホエーブスやオールドコールマンなど、自身のコレクションをメインにした小さなネットショップを始めました。
eBayやヤフオク、メルカリなどに出品されているものとは違い、私自身がメンテナンスしてきた動作品と未点火品などを揃えています。
レアなファンネルや廃盤パーツ、状態の良いホエーブスやオールドコールマンをお探しであれば、ぜひ覗いてみてください。